トランペットを吹く事は楽しいし、アドリブをする事も楽しいものです。ですが、トランペットでアドリブをするのは決して簡単な事ではありません。でも、きちんとステップを踏んでいけば必ずできるようになります。そのステップとは?
1. アーバンの47番がテンポBPM100で吹き通せる
これは、ジャズに必要な楽器の演奏力の基準だと思ってください。この練習曲にはジャズのアドリブに必要な音域、運指、タンギング、耐久力などの要素が詰まっています。簡単ではありませんので、できれば上手い方に教わるのが良いです。
2. 代表的なジャズスタンダードのテーマが吹ける
目安は5曲で、そのうちブルース一曲、循環(オレオなど)1曲、バラード一曲を含めるのが良いです。ベストなのはレコードから自分で耳コピする事ですが、楽譜を見ても構いません。ただし、その時には歌詞のついた楽譜を見ることをお勧めします。その理由は、歌詞のついた楽譜はメロディが改ざんされていることが少なく、また、息継ぎの箇所が分かりやすいからです。
3. 5曲のメロディー、コード名、スケールを楽譜にスラスラかける
これは、音楽理論に基づいてそれぞれの曲を理解していることを指します。そのためには、最低限のコードとスケールの勉強をしなければなりません。この勉強については詳しく別の記事にしたいと思います。
4. その楽譜を見ながらカラオケをバックにテーマとアドリブをワンコーラス吹ける
カラオケはiRealというアプリやJameyのマイナスワンのCDなどがあります。この時点では、フレーズはカッコ悪くても良いですが、音楽理論に基づいて正しい音を吹けていれば一旦は良しとします。
以上が、言語に例えると、ひらがなで作文をして読み上げている状態にあたります。なので、この時点ではまだ他人に演奏を聞いてもらうのは早いですし、ジャムセッションに参加しても心からの拍手をもらうことはできません。
それでは、人前で演奏して拍手をもらえるレベル、つまり漢字を使った作文を瞬時にできるようになるにはどうしたら良いか。見ていきましょう。
5. その曲の名演のアドリブのコピー譜を採譜する
これは、骨が折れますが、アドリブ習得において最も重要なプロセスです。クリフォードブラウンや50年代までのマイルスデイビスなどがおすすめです。まず、その演奏を何度も聴いて口ずさめるようになってから採譜するのがコツです。また聞き取れない箇所はスピードを落として何度も再生して音を確かめると良いです。音だけでなく、その音をタンギングしているのかスラーなのか、などアーティキュレーションも採譜します。
6.採譜したソロを分析する
クリフォードブラウンがコードに対してどんなスケールを使っているのか、マイルスが吹く決め手の一音は理論上どんな音にあたるのか、などを分析していきます。これを行うことで後に自分のオリジナルのフレーズを作って発展させるヒントになります。
7.コピー譜を丸暗記して吹けるようにする
採譜した楽譜を音源に合わせてピッタリ合うように吹けることを目指します。ピッチやアーティキュレーションにも注意します。完璧はあり得ませんが出来るだけ近づけるというマインドで臨みます。これが上手く行った時の喜びは測り知れません。まるで自分がクリフォードブラウンになれたかのように思えます。
8. コピーしたソロをアドリブの中で自由に使えるように練習する
文章に例えると四文字熟語や慣用句を覚えることに相当します。このプロセスは諸説あります。ソロ丸々を12キーに移調して覚える、と教える人もいます。しかし、これには時間がかかり過ぎるので気に入ったフレーズだけを取り出して12キーでやれば良いという人もいます。ちなみに私は、II-Vを中心に気に入ったフレーズを12キーに移調する練習はしますが、実際にソロで使うキーは限定的です。何故ならどうしてもトランペットの音域がハマらないキーがあるからです。自分なりの方法を見つける必要があります。
9. ジャムセッションでデビューする
本来はここまでを終えて初めて、この5曲を携えてジャムセッションに参加できます。レパートリーは限られているが、漢字を使った作文をその場でできている状態。こうなるとジャムセッションでその曲を演奏すると拍手がもらえるようになります。ただし、曲のイントロ、ドラムとのトレード、エンディングなど現場での対応力も付けていく必要があります。
以上の1.〜8.を繰り返してレパートリーを増やしていくと、さらに雪だるま式に語彙が増え、表現力豊かな文章が瞬時に作れるようになります。
こうすることで、トランペットでアドリブが自由にできるようになります。