はじめに
マーケターの皆さんは、パワポ、ワード、エクセル、BIツールなどのソフトウエアを駆使して仕事をしていると思います。では、それらのツールを適材適所で使えているでしょうか。マーケターのアウトプットの殆どがプレゼン資料を前提としているため、すぐにパワポを開いて資料を書き始めることも多いでしょう。しかし、ワードで出来ること、エクセルの方が得意なことまでパワポでやってしまった結果、パワポ作りに莫大な時間を浪費していませんか。
今回はエクセル本来のポテンシャルについて考察してみたいと思います。エクセルによる業務改革を得意としている、excellentree(エクセレントゥリー)合同会社代表の藤本佳織さんにお話を伺ってみました。
業務効率化は組織の上流から
松原: 忙しい企業マーケターにとって、日々の業務を効率的に進めること、そしてその上でキャンペーンのアイデアを作り出すことは重要です。そんなマーケターにとってエクセルはどんな効果をもたらしてくれるツールと言えますか。
藤本: エクセルは頭の整理と業務効率化に最適なツールです。ただ、使い方を間違えると逆に非効率になってしまうケースもあります。
松原: それは例えばどんなケースでしょうか。
藤本: 会社では代々引き継がれているファイルも多く、本来数式を入れているセルに、担当者が変わったことで数字を直打ちしてしまうなどのケースです。これは、大企業で散見されるケースで、三年ごとの人事ローテーションがその弊害の一つだ感じています。
松原: なるほど、担当者だけではどうしようもない効率化の課題もあるんですね。
藤本: やはり担当者よりも責任者が業務効率化への意識が高いことが重要だと思います。業務効率は上から、が基本ですね。
松原: その点、同感です。業務効率化のための作業を一々上司に承認を取らなければならないのは本末転倒ですね。
思考の整理のためのエクセル活用
松原: 一方で思考の整理という点ではエクセルのどんな機能が有効ですか。
藤本: 私はピボットの活用をお勧めしています。データの因果関係が分かりやすく、思考の整理だけでなく、報告の際に数値の内訳を説明する際にも有効な機能です。
松原: 確かに自分の作業だけではなく、報告の視点も重要ですね。数値に基づく思考の整理は、間違いなくエクセルが有効です。一方、マーケターの仕事の一つであるコンセプト作成など、言葉を元にした思考の整理はどうでしょうか。
藤本: それは、必ずしもエクセルが有効では無く、他に適したツールがあるように思います。なんでもエクセルに当てはめることで、かえって業務効率が下がることもあるので注意が必要ですね。
松原: なるほど、エクセルは万能では無いので、その使い方自体のリテラシーを上げる努力も必要になりますね。
エクセルのスキルアップ
松原: それではマーケターのエクセル活用スキルを上げるのには何が有効ですか。
藤本: 機能の使い方は、出版されている本にも書いてありますが、全ての機能を本で覚えていくのは骨が折れます。それよりも、実務上の具体的な課題解決で成功体験を積み重ねていくのが一番です。私が行っている研修では、2時間×6〜8コマのメニューを実施しています。最初は、ツールバーなど、意外と知らない便利なエクセルの使い方から入り、一緒にワークしながら、ピボット、データクレンジングの方法へと進んでいきます。
松原: とても親しみやすい手法ですね
藤本: そして、次のステップでとして、パワークエリーの習得をお勧めしています。
松原: パワークエリーではどんなことができるのですか
藤本: 外部ファイルのデータ統合やデータの差し替えが容易にでき、またデータクレンジングで行うような行列の追加や削除やデータの紐づけ処理など、データを扱う人にとって面倒な作業が保存をしておくことができるため、作業効率は格段にアップします。データを多く扱う方には、ぜひ覚えてほしい機能のひとつですね。
松原: なるほど、ここまで来るとシステム化の一歩手前ですね。
エクセルとシステム化
藤本: まさに、システム化するために一時的にエクセル化をしてオペレーションを回すこのとは良いステップだと思います。このステップを取らずにシステム化してしまうと思ったものと違うものが出来上がって使いこなせないことが多々あります。システム化が問題なのではなくてオペレーション設計が不十分なことが問題です。エクセルはそのオペレーション設計にも一役買う場合があります。
最後に
松原: 本当にエクセルのポテンシャルは高いですね。最後にマーケターの皆さんが、藤本さんにエクセルの相談をしたい場合はどうすれば良いですか。
藤本: まずは気軽にご相談いただければと思います。意外と整理してから依頼しようとすると、ハードルが高くなってしまいますので、初回はざっくばらんにお困りごとを伺い、進め方をご提案することが多いです。
松原: 本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
藤本さんプロフィール
藤本 佳織 excellentree合同会社代表 kaori.fujimoto@excellentree.jp
IT関連会社を経て、2005年5月ソーシャルメディア・Web活用支援のメンバーズに入社。大規模案件の開発ディレクター、常駐型運用サービスのマネージメント、管理部門での総務・人事、広告関連の運用・業務改善などを担当。多種多様な経験からExcelを通じて「業務改善のノウハウ・おもしろさをもっと多くの人に伝えたい!」という思いを持ち、2016年4月独立。その後、2021年11月にexcellentree合同会社として法人化。