ジャズ・トランペットのサウンドは、ルイ・アームストロングを100%とし、それぞれの時代毎にその中のある一部分にスポットを当ててそれを拡大しながら発展してきた歴史と言えます。その節目となった四人のトランペッターを私なりにこのように考えています。
1920′ ルイ・アームストロング
キング・オリバーの流れを汲みながらもそれまでのジャズの主流だったコルネットからトランペットに持ち替えて、ジャズをエンタテインメントの一員へと大きく流れを変えました。また、トランペットのポテンシャルを最大限引き出し、大きな音で高音域で伸びやかに歌うというジャズトランペットの雛形を完成させました。また、歌って吹くというスタイルの創始者でもあり、紛れもないスターでした。
1940′ ディジー・ガレスピー
ルイ・アームストロングの流れを汲みつつも、ビバップ・フレーズの特徴である、連続する八分音符をより早く吹くことを重視して、その領域でトランペットサウンドをまた一つ発展させた音楽家です。その分、音量は少し抑えめになり音色はマイルドに。トランペットのベルが上を向いたガレスピーモデルと膨らむ頬が象徴的です。
1950′ -1980′ マイルス・デイビス
それまでの高音を力強く吹くスタイルから、中音域でソフトに吹くスタイルへの歴史的な価値転換を行いました。このスタイルは西海岸のジャズの発展にも大きな影響を与えています。1950年代にハーマン・ミュートとマイクの組み合わせで、クール・サウンドを確立。そして70年代にはエレクトリックを最大活用してトランペットを次の次元に発展させました。約半世紀の長きに渡りジャズの発展を牽引しました。
1980′ – ウィントン・マルサリス
現在はリンカーンセンタージャズ部門の音楽監督。ジャズにシンフォニック・サウンドを初めて持ち込んだトランペッター。そのサウンドの特徴をモネット社製のヘビートランペットが助長しました。彼以降、ウイントンの影響を受けていないトランペッターは皆無と言って良いでしょう。そういう意味では、ルイ・アームストロングを100%とした場合、ウイントンも同等の100%と定義して良いと考えます。
道具の発展
そして、この4人に共通して、サウンドの発展した影にはそれぞれ道具の発展があった事実も見逃せません。ルイ・アームストロングのトランペットへの持ち替え、デイジー・ガレスピーのアップライトベル、マイルス・デイビスのミュート、エレクトリック化、ウイントン・マルサリスのモネットなど。
他にもいるトランペットの勇者
この他にも、ロイ・エルドリッジ、ケニー・ドーハム、クリフォード・ブラウン、チェット・ベイカー、ウディ・ショー、ランディ・ブレッカー、ロイ・ハークローブ、トム・ハレルなど、多くの優れたトランペット奏者がサウンドの発展に貢献したことは言うまでもありません。